【フィクション】2月2日節分と知って豆を撒いたらゴミを撒いたと怒られた話

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1.
最近おばあちゃんの具合が良くないみたい。お母さんから聞いていた。
豆まきで悪い鬼をやっつけて、おばあちゃんも元気にあればいいな。

2.
リビングにお父さんが降りてきた。だいたい夕方この時刻になると仕事が終わるとお茶を入れに来る。最近買ったメガネをかけていた。部屋に積んであった豆を見て、
「そうか明日節分かぁ。」
と独り言とも宣言ともとれないことをつぶやいた。

「今日よ。」

お母さんが反応した。そう2月2日が今年の節分だとは聞いていたけどお父さんは知らなかったみたい。

そして節分の大騒ぎが始まった。

3.
節分は、恵方巻という海苔巻を食べる家が多いみたいだし、学校でも海苔巻の話を先生や友達がしてたけど、本当は鬼がいて、豆を撒くものだとは絵本とかで知っていた。そして、うちではお父さんが大体大豆を毎年撒いていた。今年もそのつもりみたい。
お母さんが渡した大きめのお椀に豆を入れる父。

「さて豆をまこうかな。」というがiPadで絵を書くお姉ちゃん。スプラトゥーンをしつづけるお兄ちゃん。

4
「わたしやってもいいよ。」と一人ぼっちになりかけたお父さんに話しかけた。お姉ちゃんも乗ってくれた。お姉ちゃんは人の気持ちを感じる人だから気づいたけど、お兄ちゃんはゲームで負けて叫んでるだけだった。

「おにわそとーふくわうちー。」

5
リビングから窓を開けて大豆を巻く。いつも窓を開けて、
「おにわそとー」
と2回言ってから、
「ふくはうちー」
と2回言う。
お母さんは覚悟したともいっていた。家の中に豆があると掃除が大変だからだ。なるべく外に撒くようにお父さんも気遣うけど、それでも豆はこぼれる。それが後で部屋で見つかるのを嫌がっていた。

6
玄関、トイレと行こうとしたけど、わたしは
「外でまこうよ」
とお父さんを誘った。外ならお母さんは嫌がらないはずだ。お父さんとお姉ちゃんを連れ出し、たくさん豆を玄関と道路に撒いた。これで家の中に巻かれる豆はすくなくなるはずで、お母さんも助かるはずだ。

7
おじいちゃんから電話がかかってきた。今日明日、おばあちゃんの病院にお父さんたちは行くらしい。容態が悪化したらしいと話していた。私達は学校に行くのだけど、病院に行くかも知れない、だからそのときは早退するからね、とお母さんが話してた。できれば授業が終わってからがいいんだけど。

8
お外での豆まきのあと、もう1袋を開け、家から外へと撒いていった。トイレで豆がのこってるととてもブルーになるもの。なるべく外に撒くようにしても、何粒かはトイレの部屋にのこってしまう。お兄ちゃんの部屋、私達の部屋、お父さんの部屋が終わり、豆まきは最後、お母さんのベッドルームで終わるはずだった。窓を開けて、外にむけて豆をまく。今度は全部外の上手に撒くことができた。

9
「とてもいいことしてるんだけどねー」
外でお隣のお母さんが車のそばに立っていた。もしかしたら豆があたっちゃったかも。
「すいませーん」
とすぐお詫びをした
「外に撒くのはいいけど、お家の中でしてくれるかなー、掃除が大変なのよ」

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お父さんは子供だからコントロールできなくて、なんて話をしてたけど、窓から外に豆を撒いたら、普通隣の家にも豆は行ってしまう。
豆まきはそこそこでやめてリビングに戻ると、隣のお母さんがチャイムを鳴らした。
掃除が大変だ、ということを改めて伝えに来たみたい。

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お母さんは
「すいません。今すぐ片付けます」
とつたえてほうきを持って外で掃除をはじめた。
お父さんも外にで掃除をしはじめた。
私も豆を撒いたから手伝いに出た。
でも外は暗い、全部は掃除しきれないかな、と思ったので
「明日片付けましょう」
という話をしてお母さんたちは家に戻った。
お父さんたちは家に戻ったけど、もう少し掃除しようと思ったところで、お隣のお父さんが家から出てきた。
「食べないものを撒くならゴミと一緒。ゴミを人の家にまかないでくれるかな。」
と注意を受けた。

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そのことをお父さんたちに言ったら、お父さんが腹をたてていたみたいだった。
もう一度家を出て、とりあえずできる限りキレイにしようということになり、もう一度掃除を始めた。
向こうのお母さんお父さんも家から出てきて、再び注意をしていたみたい。大声だったので近所も出てきて、ケンカしてるように見えたのだと思う。
お父さんも何か言い張ってたけど、迷惑をかけたのは変わりないから、言い張ってはいけないと思った。
最後には、車の下に豆が残ってるから、長い放棄で全部掻き出してくれ、車を移動する義理はないから、自分でがんばってくれ、みたいなことを言われてて、お父さんも困っていたようだった。

もう豆まきはしたくないな、少なくとも近所に迷惑になることはしたくないなと思った。

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できる限り掃除が終わったところで、家に帰った。
お父さんは疲れてるようで自分の部屋にもどった。私はお父さんの部屋に言って、言わなければいけないことを伝えた。
「自分が間違ってることを言い張るのはやめて。間違ってることをがんばっても間違ってるんだから、それは周りにも迷惑だから、素直に認めて。」
お父さんも反省しているようだった。

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次の朝、学校に行くときに道路を見たら、豆は殆どなくなってた。お母さんたちは朝もう一度掃除をしたいみたい。
家の前もきれいになっていた。豆をキレイにするとともに玄関を掃き清めたからかな。

15
翌日おばあちゃんがお亡くなりになった、と母から聞いた。
今週末は地元にいっておばあちゃんのお葬式に参加する。
おばあちゃん元気になればよかったけど、コロナのせいで会えなかった。
もう一度会いたかったな。

Toshiaki Ejiri: Born in Fukushima, working as web analytics consultant since 2000.