僕のバックトゥザフューチャー:20年前にウェブ解析を選んだ僕が2017年に20代なら選ぶ仕事

僕みたいなどうしようもない人が今こうやって生かされているのも、大事だとおもった仕事を発見し、こだわってきたことに尽きる。能力もセンスもないから経験の長さと集中した時間で補うしかない。2000年、正確には1997年の私にとってそれがウェブ解析であり、アクセス解析だった。ウェブ解析にもとずいたビジネスの測定、ビジネスの改善は「これはずっと大事でありつづける」との確信からだった。

2017年になった。バックトゥザフューチャー2の未来は過去になり。ビフ・タネンみたいな人がトランプという名前で大統領になるとは思わなかった。2016年から不条理な仮説が現実になり続けている。私が2017年に20代だったらウェブ解析の専門家を目指すか?といえば答えはNoだ。いまや専門家はたくさんいて、改善方法も測定方法も研究され尽くされているので、根性も直感力もない私が伸びる可能性はない。

私がウェブ解析をやろうとして20年たった2017年に、このウェブ業界に入ろうとするなら間違いなく「サイトパフォーマンス」と「マーケティングテクノロジー」の専門家を目指すだろう。

なぜ、UXやAIを目指さないのか?サイト表示速度や、マーケティングオートメーションより絶対的に重要だが、あれはバカにはできないからだ。どんなに経験をつんだとしても、図抜けた才能を持つ天才の洞察とプレゼンに多分勝てない。50代の大学の先生だって、20代の被験者に近く洞察の優れた天才に会えばボコボコに負けるだろう。だからオウンドメディアとかPCとかに固執するのかもしれないがそれはまた今度。でもってウェブ解析ではそんな天才は出てこないのだが、それもまた今度。

サイトパフォーマンスとはウェブサイトの表示速度を測定し、原因を特定し、改善するという仕事である。原因はサーバだったり回線だったりもするが、結構な割合ウェブサイトの作りに影響している。

ブロードバンドだ無料wifiだいう世の中で何をいまさら表示速度か?と思うかもしれない。でもそんな考えの方が時代遅れ。スマホとインターネットの普及でむしろ表示速度の改善がビジネスの成果に直結している時代が来たのだ。

ウェブ解析で事業の成果と必ず正の相関関係をもつ数字なんてほとんどない。CVですら、商談や受注などのプロセスがあれば相関関係を疑う必要がある。しかし、サイト表示速度の改善は事業の成果に直結する。サイトパフォーマンスには、売れない商品を売る力はないが、売り逃す機会損失を減らす。

だから、もし僕が2017年に20代ならサイトパフォーマンスの専門家を選ぶだろう。DOMを測定し、原因をISPからJavaScriptまで確認し、クリティカルな問題点から直す仕事は廃れる要素がなく、サイトパフィーマンスの改善方法は変わるかもしれないが、測定する方法は10年後も必要とされる

しかし、サイトパフォーマンスは地味だ。2000年のころのアクセス解析を思い出す。当時「ウェブ解析したら何がよくなるのですか?」と必ず聞かれたものだ。解析しなきゃ悪いところも良いところもわからないのに、改良する方法ばかり求めるものだ。でも、あの当時から確信していた。SEOだ何だかんだと、改善する技術はうつろうが、ウェブ解析は変わらない。サイトパフォーマンスもチューニングする方法は多岐に渡るだろうが、測定する方法、問題発見する方法は変わらない。

サイトパフォーマンスは、しつこいが“地味”だ。そこで打ち手が欲しい。そこでタグマネやマーケティングオートメーションの専門家であるマーケティングテクノロジストがいいんじゃないかと思う。

これまた、本業のプログラマとかデザイナーから見たら地味な職業だ。マーケティングテクノロジーでは基本、ウェブ解析やMAなどのベンダーが提供するツールを使うので、自分でゼロからプログラム組んだり、デザインするなんてことはない。ソリューションを使う延長線上のテクノロジーなのだ。マーケティングテクノロジスト”マーテック”の仕事とは、YTM GTM DTMなどのタグマネージメントツールやマルケトやエロクアなどのマーケティングオートメーションツール、それらを有機的に動かすためのCRMやSFAやウェブ解析のデータをひもづける仕事。北斗の拳みたいに世界が核の炎に包まれない限りこの仕事のニーズが減ることはない。

自動車業界で言えば、チューンナップだ。車の設計やデザインする人はそんなにいないが、速い車、便利な車としてカスタマイズしたりチューンナップする人はたくさんいるし、そこに高いお金を払う人もいる。そういう人材の方がニーズは多いし、仕事も多い。そして今から色々経験積んでいれば、必ず役にたつ。突然JavascriptもWebも無くならないからだ。

実は2000年会社を立ち上げた前後、私の会社は「ホームページ作成会社」で検索エンジンで上位1位だった時期がある。SEOという言葉すらなかった時代、このノウハウを極める選択肢もあり、当時のデザイナーもそれを進めたが私は気乗りしなかった。それって検索エンジンの後を追いかけることになる。検索エンジンはユーザの欲しい情報を出したいし、私たちはクライアントをたくさん露出させたい。その矛盾した要望は永遠に交わることがなく、結局私たちが主導権を持って周りを幸せにできない。この仕事儲かるかもしれないが、検索エンジンを永遠にリバースエンジニアリングしなきゃいけない。そこに僕のモチベーションはないし周りを幸せにできる気もしなかった。クライアントを幸せにしたらユーザが幸せじゃなくなるかもしれない。それって引退したあと人に話して楽しい仕事か?と思った。

どの仕事でもいいのだが、仕事を選ぶとき、自分が極める方向を決めるとき、その先に自分が主導権をもって周りを幸せにできるかで考えるといい。

マーケティングテクノロジストになるなら、海老沢さんこの本「デジタルマーケターとWeb担当者のためのGoogle&Yahoo!タグマネージャーの教科書 ~デジタルマーケティングを加速させるタグマネージメントを徹底解説! 」が今後文字通り教科書になるだろう。と、竹洞さんサイトパフォーマンスAdvent Calendar に寄せる。

 

Toshiaki Ejiri: Born in Fukushima, working as web analytics consultant since 2000.