「GA4は死んだ」——Googleの“支配”からデータを奪還する方法

「GA4は死んだ」——Googleの“支配”からデータを奪還する方法

ある書籍で数ページ原稿を頼まれたけど長すぎて大幅にカットしたのでこちらに載せておきます

GAではもう戦えない?ーマーケティングデータの不都合な真実

多くの企業が、GA4を導入したものの「よく分からない」「結局UAの方が見やすかった」と口をそろえます。GA4に変わることで、いままでのウェブ解析はついに終焉を迎えました。

サンプリングされたデータ、集計済みの数字、Googleが「見せてくれる」範囲の標準レポートでは、もはや事業の成果に直結する「顧客の動き」は見えません。なぜなら、GA4が提供するのは、企業の成長を加速させるための「カスタマー」の視点ではなく、単なる「ウェブサイトのトラフィックの定義」に基づく断片的なデータに過ぎないからです。さらに、ITPによるCookieの短命化や個人情報規制の強化、そして何よりもAIによる検索行動の変化によって、これまで頼りにしてきた計測データ自体が、もはや信用に足るものではなくなっているのです

GA4が悪いツールだということではありません。GA4は優れた無料ツールです。しかしGA4は、もはやマーケティングツールではありません。それは「アプリ解析」と「クラウド課金」を主眼にした、Googleのビジネス基盤そのもの。無料で使える“分析ツール”の仮面をかぶった、「Google Cloud」への入り口なのです。

つまり、GA4の画面で見えるデータは氷山の一角。本当のデータはすべてBigQueryに格納されています。BigQueryとはGoogle Cloudにあるデータ保管庫です。GA4で計測したユーザー一人一人の活動を記録した生のデータ(生ログ)を全て理論上いつまでも保存できます。GA4の画面で見えるデータは、実は「要約された数字」だけにすぎません。

GA4単体で戦おうとする企業は、もはや“Googleに依存した見かけ上の数字”しか扱えない状態なのです。しかし、BigQueryにデータをエクスポートすれば、以前は毎月100万円以上かかった、「水面下」の生ログにアクセスできるようになります。

GA4の導入で、アクセス解析はついに終焉を迎えました。標準レポートでは、もはや事業の成果に直結する「顧客の動き」は見えません。なぜなら、GA4の標準レポートで見られるのは、「◯◯ページが何回見られたか」「◯◯秒滞在した」といった数字だけ。しかし企業が本当に知りたいのは顧客です。「誰が」「なぜ」あなたのサイトを見ているのか、そして「何がきっかけで購入したのか」ではないでしょうか。

さらに、ITPによるCookieの短命化や個人情報規制の強化、そして何よりもAIによる検索行動の変化によって、これまで頼りにしてきた計測データ自体が、もはや信用に足るものではなくなっているのです。

まずは計測データの精度を高めるためにGA4をお使いならBigQuery(BQ)にデータをエクスポートしてください。なぜなら、このデータ危機を乗り越えるには、GA4の「箱」から抜け出し、「データの所有権」を企業自身が取り戻すしかないからです。その鍵を握るのがBQへの生ログのエクスポートになります。GA4の真価は、実はその裏側にあるBQにあります。GA4で収集されたデータは、すべてBQというクラウドデータベースに格納されています。そこには 管理画面では見えない、きわめて詳細な生ログが保存されています。

しかしBQの登場は、マーケティングの民主化ではありません。これは「能力格差の顕在化」になってしまっています。BQ上のGA4データは、ネストされた入れ子構造(テーブルの中にテーブルを作る構造)で非常に複雑であり、そのままでは分析困難という「鉄の壁」が存在します。

ここで登場するのが、WACAで提供するデータクレンジングツール「Analog 4 U (A4U)」です。A4Uは、この複雑なネストを解消し、データをシンプルな表形式に変換、スプレッドシートやExcelで扱える形に整形し直します。これにより、データ解析の難易度が劇的に下がるのです。これにより、企業は自社のデータを「Googleの箱」から取り戻し、自社の会員情報や購買履歴、メールの開封データなどをつなげやすくなり、分析結果をスプレッドシート、Looker Studio、BIツールへと自在に接続できるようになります。

しかし、データはただ、「見る」ためにあるのではありません。それは、事業の危機を察知し、未開のビジネスチャンスを指し示す「羅針盤」であり、競合を打ち負かす「戦略兵器」であるべきです。BQとA4Uがもたらすのは、データを「活用」し、「事業を動かす」ための顧客の行動データの統合です。

GA4から抽出したログを、CRMの会員データや購買履歴と結合し、カスタマーのステージを分析できる「カスタマーアナリティクス環境」をつくることを実現します。

このようにどの施策がどのステージの顧客に効いたか

  1. どの広告がLTVを伸ばしているか
  2. どの顧客が次に離脱する可能性があるか

といった実務的な問いに答えを出すことができます。

データを取り戻し、事業を動かす――A4Uの挑戦

「データは21世紀の石油」――この比喩は使い古されましたが、多くの企業は自分の油田を持っていません。Googleに、Metaに、SaaSベンダーに預けたままです。A4Uが実現するデータを取り戻し、事業を動かす――A4Uの挑戦

のは「データの奪還」です。GA4の生ログをBigQueryに流し込み、クレンジングし、企業が自由に使える形に整える。この瞬間、あなたの会社のデータは「Googleのもの」から「あなたのもの」になります。解約したら消える分析環境ではなく、永続的に蓄積される資産に変わるのです。

しかし「所有」は始まりに過ぎません。データを持っているだけでは、ただのストレージコストです。ここから先が本番です。 

​​生ログの最大の価値は「つながること」にあります。GA4のデータは匿名化されていますが、BigQueryに落とした瞬間、それは変わります。CRMの顧客ID、メールアドレス、購買履歴、サポート対応記録――これらすべてを、user_idやclient_idをキーにして紐付けられます。すると、こんなことがわかるようになります。

  • どの法人組織が、何を目的にコンテンツを見ているのか
  • LTVが高い顧客の初回訪問時の行動パターンは何か
  • 離反客を再び動かす施策はどれがもっとも効果的なのだろうか

これを実現するのは「分析」ではなく、実現できるデータの「設計」です。データを有機的に結合し、顧客を明確にし、事業の成果を加速するための設計です。具体的には顧客の興味関心ごとにステージを決め、そこでは「ユーザー」を「カスタマー」としてとらえ、「興味」「行動」「継続」へと移る軌跡を、収集、Cookieの延命・サーバサイドログによって長期間追跡しています。そこではユーザーが「興味」から「行動」へ、「行動」から「継続」へと移る軌跡を、Cookieの延命・サーバサイドログによって長期間追跡しています。これまでGoogleの都合で削除され、要約され、切り取られていた行動の連鎖が、ひとりひとりつながります。

Googleが“所有者”だったデータが、A4Uによって“あなたの資産”になる。企業がデータを「利用する側」から「所有する側」に戻る。データ主権の回復――それがA4Uの挑戦です。

「そんな環境、大企業じゃないと無理でしょ」――いいえ、違います。

BigQueryの月額料金は数百円、A4Uは1万ログで1500円程度。Claudeなど生成AIを使うコストは$20程度。合計しても月額1万円以内です。これを実現できる、技術とマーケティングを理解する人材、マーケティングテクノロジスト(Marketing Technologist, MarTech)が日本に足りないのです。この職種は、まだ「肩書き」として確立していません。しかし5年後、最も市場価値の高いマーケターは間違いなく彼らです。高価なマーケティングツールは不要です。今ある技術を事業を加速させるために使える人材が必要です。

AI×マーケティング――生成AIとデータが拓く未来

大規模言語モデル(LLM)の登場は、マーケティング分析の「技術障壁」を破壊しました。

SQL、R、Pythonなど技術的詳細な知識を持ってなくても、「先月の流入経路別のCVRを計算して」と指示すれば、適切なクエリを生成し、実行し、結果を解釈してくれます。そしてRStudioと連携させれば、可視化まで一気通貫です。

しかし、ここで錯覚してはいけません。AIが「代わりにやってくれる」のではありません。AIは「あなたの指示を実行する」のです。つまり、Martechの知識がなければ、答えも無価値です。

このように、専門知識がなくても、日本語で質問するだけでデータ分析ができるようになります。

これから人間に求められるのは「問いを立てる力」=「仮説力」です。仮説があれば、あとはAIが答えを探してくれます。誰もがウェブ解析を実施し行動に移せる「ウェブ解析の民主化」は、Martechの力があれば、実現できます。

AIが記事を書き、ソーシャルメディアに投稿し、動画を生成してコンテンツを作り出す時代、ウェブサイトだけが唯一正しい、確かな情報を発信できる手段となります。そのとき、AIのクロールも含め、ウェブサイトの動向を知ることの重要性はさらに高くなるでしょう。

かつて大規模・高度なデータ分析は、大企業とコンサルティングファームの特権でした。数千万円の投資、専門チーム、高度な技術と知識が必要でした。しかし今、その壁は崩れています。A4UとBigQuery、そしてAIの力で、中小企業の一人のマーケターでも、かつての大企業と同じ戦い方ができるようになりました。

問題は「できるかどうか」ではありません。「やるかどうか」です。取り残される者と、踏み出す者。あなたはどちらを選びますか。

ウェブ解析士協会では、ウェブ解析の理論と実践を身につけた上級ウェブ解析士に対して、マーケティングテクノロジスト認定講座(旧上級GA講座)を開催しています。一人でも多くのマーケターが「解析」から「設計」にスキルアップを支援しています。技術力で企業のウェブ解析の民主化を実現することができるよう、人材の育成を進めます。企業の規模、リ立地にかかわらず、デジタルマーケティングで世界中の中小企業がユニークな製品やサービスで成功できる社会を作るよう、支援していきたいと思います。

これは「WACA Advent Calendar 2025」の7日目の記事です。
https://adventar.org/calendars/12468

久しぶりにブログ書いたよ。2年ぐらいほおっていたね💦