三方良し(three way satisfaction)
「売り手によし」、「買い手によし」、「世間によし」という商売についての考え方を「三方良し」といいます。
商売をするときに売る利益のことだけではなく、買う人が喜ぶことを考え、そしてその先に社会がよくなることを考えてビジネスをするという解釈ができるでしょう。
この考えは近江商人が考えたことだと言われています。近江商人は今で言う琵琶湖で有名な滋賀県のあたりの商人です。
近江商人は自らの利益(売り手によし)だけを追い求めるのではなく、買った人多くのお客様にとっても喜ばれること(買い手によし)がなければ、よい商いではないと考えました。
さらにその商いは、繁盛することで社会がよくなったり、商いで得た収益を社会がよくなるために還元すること(世間によし)を大事にしました。
日本有数の商社、伊藤忠商事も近江商人の初代伊藤忠兵衛が創業者です。そこで2020年1月伊藤忠商事の社是は「三方よし」に変えました。今でも有用な経営思想であるといえそうです。
この自分たちが利益にを上げるだけではよくないという考えは日本の他の商人にも当てはまります。住友商事は16世紀住友政友が創業しましたが、その心得を説いた「文殊院旨意書(もんじゅいんしいがき)」の冒頭には
商売は言うまでもなく、人として全てのことに心を込めて励むこと
sumitomocorp.com/ja/jp/about/company/sc-history/history
となっているそうです。「浮利を追わない」「法令順守」「信用・確実」ことは住友グループ全体の方針となっています。
明治維新のアントレプレナーも「三方よし」だった
急速な西洋化が進んだ明治維新でも、この精神は失われませんでした。武士も商人も論語を学んでいて、その精神を忘れないまま、欧米の資本主義をとりいれました。
明治を代表する実業家、渋沢栄一の「論語と算盤」でもこの道徳心「論語」と経済感覚「算盤」のバランスについて説いています。彼を含め明治維新のころの多くの実業家は日本をどう発展させるか、豊かにしていくかを考えて実業を起こしていきました。
日本独自の資本主義
資本主義は自分たちの利益(資本)の拡大を追求する社会です。資本主義で影響力を持つ階級は株主です。株主利益を追求することが会社・従業員に求められるのが資本主義です。
日本も資本主義社会です。しかし日本では株主利益の追求だけでは説明できない「世間よし」の考えがあります。海外の会社でもCSR活動として社会貢献を行います。同様の考え方も含まれるでしょう。
原丈人が『21世紀の国富論』で提唱した公益資本主義もその流れを組む考えと言えます。
公益資本主義とは、利益を求める欲望経済を利用しながらも、社会にとって有用な企業を全世界に生み出す流れを起こしていく経済システムを立ち上げようとする運動である
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E7%9B%8A%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9
1. 事業の成果を上げ、産業を振興します
以上、もちろん日本のすべての経営者がこのような高い意識をもっていたわけではありません。しかし後年になって尊敬されている多くの実業家は優れた社会的貢献を行ってたと考えて良いでしょう。
日本のすばらしい偉人をご紹介したあとで、甚だ恐縮ではありますが、ウェブ解析士も「事業の成果を上げ、産業を進行します」という行動規範を掲げています。
ここで私達が戒めにしたいのは「事業」と「産業」です。
私達が貢献するのは「事業」です。「ウェブサイト」や「広告」ではありません。常に顧客やクライアントの事業の成果に貢献することを目的として行動をしています。
だからウェブサイトを全くカイゼンしなくても、営業や製造に役立つ情報を提供したっていいのです。ウェブサイトが無くてもいいかもしれません。そこを忘れないでください。
そして私達は産業を振興します。様々な産業がありますが、とくに気をつけていきたいのはインターネットの産業の振興を志したいところです。インターネットは利用者全員の善意によって維持できるシステムです。誰もが好きなように情報を出せるのですから、嘘や欺瞞が横行すれば、価値がなくなる産業です。私達は目の前の利益をもとめるあまり、インターネットが信頼できない空間になることを避けなければいけません。
このような意思をもって仕事をしていきたいと思います。
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