書籍を作ることは作品を創ること

書籍を作ることは作品を創ること

書店に並ぶような本を書きたいという思いを持つ人は多いが、ほとんどの人はその機会がない。100人に1人もないだろう。なぜならリスクが高いからだ。版元からみて、その著者が、たとえ実力があっても書けるかわからない。わかりやすいかはわからない。売れるかわからない。そのような人に書かせるのはよっぽどニーズが明確で、誰も書けないことが書ける人だ。だから100人に1人もいない。

私たちは優秀な実務経験者に書籍の著作者となる機会をつくりたいと思っている。ウェブ解析士協会の会員にはテキスト執筆を通して、その機会を作っている。執筆者としてリストアップされ、その実績として評価されるからだ。それから独自に書籍を作った人は少なくない。

ウェブ解析士協会は、書けるかどうかわからないひとも複数の人がサポートすることで書くことを担保し(書けない人はサポートしたり外しながら納期を守り)、わかりにくいことを会員で補い大人数で出版している。そして出版したテキストは会員、受講者が買ってくれる。だからどんな無名な人がどんな実力があるかわからなくても書く機会をつくることができる。

書籍を執筆する報酬はどのぐらいの価格が適正なのかも大きな誤解があるかもしれない。作業時間、工数で考えるとほとんどの人にとって書籍を書くことは絶対に割が合わない。村上春樹のようなプロの作家ならともかく、IT系の本を書いている人で書籍で食ってる人はいるのかな?と思う。私は誰も「私はXX技術の本を書いて食ってます」という人、見たことがない。そして書籍の執筆は手間はかかるが実入りは少ない。工数で考えたら時給なんて100円とか200円ぐらいだろう。それほど部数の出ない技術書は印税で考えれば本当に安いので執筆活動に必ず割が合わないのだ。そこまで安くても書きたい人が多い。なぜならブランディングにつながるからだ。書籍を書くことは仕事や講演やその後の実績として紹介するのに役立つため割に合わなくても書くのである。

そして執筆するための十分な時間は、ほとんどの著作者は持てない。IT業界だと多分100%の人は書籍の執筆は副業だ。自分のブランディングのため、後世の人により良い情報を残すために書籍を書いている。副業だから時間の制約はある。それでも本を残すか、そんな仕事割りに合わないからもっと儲かることをするかだろう。

ウェブ解析士のテキストなんて、いまやそこそこの受講者がいるから、ほっておいても一定数売れる。でも私は書籍に対して、真摯に有りたいと思ってる。

ぼくにとって書籍は作品だ。
そしてすべての書籍はそうあってほしいともう。

一緒に書籍を作る人はには、その貴重な機会を生かしていいものをのこしてほしい。工数が割に合うか、副業だから時間がないからと内容よりスケジュールを気にするなら多分関わらないほうがいい。なぜなら私たちは私含めて書籍作りの素人だ。プロではないのに、教えてもらわなきゃいけないのに、報酬と拘束時間を気にする人に、仕事を頼むか?僕は頼まない。

作品だから良いものを残すことが一番大事であり、組織や体制やスケジュールは二の次だ。1分1秒でも、1ページ1ミリでも良いものを作るために全力で頑張るのが作品である。良いと思えば差し替え、ダメと思えばやめる。それがどんなタイミングでもそれはおきうる。組織もスケジュールもつねに入れ替わる。私たちはプロジェクトを楽しく遂行することが目的ではない。その先に書店で手とった読者が、これ良いかも!と思う書籍を、世界で一番いい書籍をつくろうとどこまで努力できるかである。

私は書籍を作ることは、作品作りだと思ってる。

だから過去の書籍や、他の書籍と同じような書籍をつくるなら価値がない。他の書籍にはないような価値を作ろうとしなければ作ってはいけないと思ってる。

なぜならこれは、まだ知らない人が知るために、知識を得るために学ぶものだからだ。同じような事が書いてある書籍が沢山あってうんざりする経験はあるだろう。そのような他と同じような書籍になるものを作ってはお金を出して買ってくれる読者の迷惑であると思う。

私は毎回冗談抜きに毎年史上最高に良いテキストを作ろうとしている。そのためにギリギリまでがんばる。もちろんどっかで諦めるけど、いつも無理して最高のものをつくってきた。素人だから、素人なりにベストなものを作ろうと頑張ってて、それをマイナビの編集者も暖かく見守ってた。それが今までの受講者の信頼と、活躍につながってきている。

関わる全員にとって作品

版元が本を書くとき著作者の出版実績を必ず見る。アマゾンでの評価1点がたくさんあったり、誤字が多くて改定本を出したり、その本が全く売れない著作者に執筆を依頼することはない。売れない本、トラブルになる本を書いた執筆者に依頼するリスクを取りたがる編集者はいない。だから責任は書いた人間に責任をとれないということはありえない。その人の実績になるからだ。書籍を作るからには1文字でも書いた人は責任がある。それが世に広まり人が読むからである。責任ない中でしか書籍を書けない人は匿名掲示板で書き込むほうがいい。自分の名前で書いた文章が書店に並び、お金を払って買った人がいて、責任がないようにしたいというなら、その人は公に出版する書籍を書いてはいけない。