シンガポールで就業ビザ取得に2回失敗した体験談
- 2021.01.27
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ということで、シンガポール在住のコンシェルジュのアドバイスを参考にしつつ、ウェブ解析士協会の海外法人WACA Pte.Ltd.は立ち上がった。
コンシェルジュのアドバイスでは、資本金はいくらでもいいということだったので、資本金は1ドルにした。
当然資本金を積み増すこともできたが、それは理事解決議もいるし、資本割合もあるのでまず1ドルで後で増資しようとぐらいで考えていた。
定款は日本で商取引上ほとんど問題になることがなかった。日本の場合公正役場で確認して公序良俗に反していない限り、大きな問題にはならない(定款にない仕事をしたから外的に法律違反ということもない)。そこで大きな問題だと捉えていなかった。
定款はどれでも好きに選んでいいというアドバイスだったので、この会社の場合定款つまりActivityは
85502 EXAMINATION AND ACCREDITATION AGENCIES FOR EDUCATION SERVICES
を選んだ。
このアドバイスを参考にしたのは失敗だった。これから就業ビザをとるためにシンガポールで現地法人を設立するなら、この2つはよく検討したほうがいい。
2回の就業ビザの取得の失敗
その判断ミスは就業ビザ取得の失敗の一因となったようだ(実際にはそれが原因かどうかはわからない。ビザ取得ができない理由を明確に提示してくれるわけではないからだ)。
1回目も2回めも就業ビザ取得の専門業者にお願いした。それぞれ結構時間がかかり、仕事の体制や将来の給与支払い予定など、様々なビジネス立ち上げ後の計画を提示した。1回目も2回目も就業拒絶理由は
この会社がシンガポールで雇用を生み出すとは思えない
という一文であった。振り返って問題は3つある。
- 起業してすぐに就業ビザを申請すべきだった
- 会社として一般的な資本金にするべきだった
- 定款はわかりやすいものにすべきだった
起業してすぐに就業ビザを申請すべきだった
これはシンガポールのコンシェルジュサービスの会社の問題ではないが、会社を起こして、ビザを取得するまでに2年ぐらいブランクがあいてしまった。
それは会社設立後、国内の事業での立て直しやその他の国への展開などをしていたためだった。
その結果、1年間雇用しなくてもビジネスが回るということになってしまった。
起業したすぐであればまだこれからなので雇用があるはずだ、などのストーリーは書ける。
すでに起業して数年回してしまうと、その後雇用が発生する=シンガポールの経済に貢献するから就業ビザを出すべき人材だ、ということが証明しにくくなってしまう。
資本金は会社として給与を払えそうな額にすること
資本金1ドルで会社は作れる。しかし就業ビザを発行するための法人としては望ましくない。給料を払える、シンガポール人を雇用しそうな会社だと見せることが重要になる。当然、社長も給与を会社からもらうことになる。
いくらか?というと約束はできないが、多分10,000sgd(約8,000,000円)は必要ではないかと思う。
私のようにビザ取得で2回落ちてしまうと、微妙な状態になる。私自身について就業ビザを発行を拒否した履歴がのこってしまうので、この会社に今更資本金を強化したところで、ビザが通る保証にもならない。このような状況で資本金増資が無駄になる、というのは避けたくなってしまう。
定款をわかりやすいものにすべきだった
シンガポールでは定款にコードがあり、そこから選ぶことになっている。これは分かりやすいシステムだとは思うのだが、就業ビザを申請するときに、申請をうける担当者が判断しやすい定款にするべきだった。
例えば貿易であれば輸出入だし、コンサルティングなら企業での問題解決など、大体想像がつく。
私の定款は試験システムを教育産業に提供する。これはどういう雇用が生まれて、どういう収益と税金をシンガポールにもたらすか分からない。
普通企業はいくつかのサービスを提供するのだから、変に難しいサービスではなく、ビザ取得時に担当者が想像しやすいものにしておくべきだった。
この定款変更もそれがどのぐらい就業ビザ申請に役立つかも不透明だ。
そこで専門家から一度この会社を精算し、あらたに会社を作り直すところからスタートしたほうがいいのではないかという意見もあがっている。
しかしそれも不透明で、シンガポールで就業ビザをとるということは、よほどビジネスの機会がうまれ、動くべきタイミングにならないと一旦私は諦めるしか無いかなと思っている。
シンガポールも含め海外での事業展開のパートナー選びは慎重に。
シンガポールでの就業ビザ申請に失敗した理由は私自身にもあり(もちろん犯罪歴とかはない)、申請のタイミングなどもあったろう。しかしCPAとかコンシェルジュとかシンガポール在住とかそういう肩書と登壇している話だけを聞いて、日本人であれば真面目に仕事をしてサポートしてくれるだろうという考えが甘かったと思っている。
結局この会計士は1年会計をお願いし、年末になり、書類がとどき、これに全部記入してくれ、という依頼があった。その会計士が進めた会計ソフトquickbookに頑張って記帳したのだが、その会計士は使ったことがない、ということだった。まさか使ったこともないソフトを会計士がすすめるとは想像もしていなかった。
会計ソフトログインして見てくださいよ、と日本人の会計士に伝えても、会計ソフトに入って決算書作成もしない。あくまで決算に必要な書類を会社の社長や会計士に作らせるのだ。PAYPALの支払いについて、これ全部確認してください、と言われたときには流石に、それは何をどう確認するかなかったら回答もしようがない、と伝えた。
他の士業でも当てはまることだが、日本国外の人は他に相談できる人がいない分、仕事のクオリティが低い傾向にある。またシンガポールに限っては日本人に限らず、シンガポール人の会計士も基本的に「言われたことをやる」だけの人が多く、日本の会計士のように経営相談や節税なんて話を考えてくれる人は稀なようだ。
このように海外にいる日本人で「日本人の海外展開支援」をビジネスにしている人には、かなりの割合で日本人を食い物にしている専門家が多いということだ。騙してはいないかもしれない。でもビジネスの成功を支援するという視点では私は選択肢を間違えたし、そのクオリティで専門家の対価を求めるのはありえないことだと思っている。
私は失敗したが、同じ失敗はしてほしくない。だから海外に行くとき、とくにアジアに行くときには一言連絡もらえれば、具体的にどこを選んではいけないか、どこを選ぶべきかは伝えられると思う。
なおシンガポールでの就業ビザ取得は年々困難になってきている。シンガポール政府としては当然のことだが、シンガポール人が働いてできる仕事を外国人に渡してシンガポール人の雇用やビジネスを奪ってしまうようでは困るからだ。
永住権もシンガポールでは何があっても永住できるわけではなく定期的な審査で、場合によっては帰国することになる。
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